僕にとってカッコイイ大人とは―ひさびさにテレビ界の重鎮に感じたもの

「カッコイイ〜」
 エレベーターが閉まると、思わずそうつぶやいてしまった。同行のカメラマンなどに笑われた。ひさびさにカッコイイ大人に会えた。テレビ界の重鎮Sさんとしておく。
 では、何がカッコイイのか。66歳にしてなお情熱的に仕事について語れること。しかもじつに楽しそうに話せる人だったこと。それでいて、じつに戦略的に物事を考えられるロジカルさ。しかもえらく年上のひとに対して失礼なのだが、人としての可愛げがあるんだなぁ。それは意識して出せるものではない。そのバランスがじつにいいんだな。あれは好きなことを仕事にしてきた人だけが醸し出せるものだと思う。そんな人はやはり少数派だから。
 その上、若輩者をわざわざエレベーターまで見送り、きちんと頭を下げるという謙虚さも失っていない。そのお辞儀を見たとき、冒頭のつぶやきが溜息まじりに思わず出た。ああいう人に会えたとき、この仕事をしていて良かったなぁと心から思える。だって、普通の人はそうそう会えない立場の人だから。
 その貴重な時間が聞き手であり、書き手である僕の目に見えない血肉になってくれる。何より、実人生の目指すべきモデルにすることができる。 ぼくもああいう60代になりたい。