NHK総合「HASライブ」〜静かな湖面に立ち上がる凍れる青き熱情 

rosa412007-07-06

 ひさびさに夕方、走る。走り出してすぐに、右太腿の張りを感じる。そのため終始、慎重に低速で走る。いわば慣らし運転。体調は毎日微妙に異なることが走ることでよくわかる。昔にくらべて、そういう変調により敏感になっているのは、体力的な衰えのせいだろう。だから、それはまぎれもなく老いることの長所だ。
 慣らし速度でも、次第に体が温まると、何かしら余計なものが皮膚から剥がれ落ちていく。それは愚鈍な生活感だったり、やり残した仕事のことだったりする。まるで南京豆の皮を剥くかのように、そんな日常を脱ぎ捨てて、つるりとした自分が現れる。それは、ただただ前進するほかない、裸ん坊の「いのち」としての僕。
 それに似たものを、今夜テレビで観た「YMO」改め「HAS」の旋律に感じる。昔は電子音なんてまるで興味なかった。だが、僕がいったんJAZZ音楽を経てきたせいだと思うけれど、今ならその音楽が聴ける。今日聴いた中では、「RESCUE」と「CUE」がカッコよかった。
 どちらにも、静かな湖面に立ち上がる凍れる熱情を感じる。いたずらな情緒や汗臭さをいったん凍らせた上で、彼らがそれぞれの青き熱情を、その音楽に注ぎ込んでいることがわかる。おそらく、それは彼らが老いることで、より一層熱情の価値に敏感たりえているということ。そして何より、あの55歳2名と60歳目前の1名の大人の男たちが、そういう音楽をやっていることの、そのチャーミングさが秀逸。