佐藤哲郎写真展「紐育流浪」(新宿ニコンサロン・今月27日まで)〜突き放す距離感(1) 

rosa412007-08-14

 今のオレにこんな写真は撮れない、では、なぜ撮れないのか―そう自問自答しながら、この写真と20分近く向き合った(佐藤さんの許可をえて撮影させてもらいました)。もちろん、技術的な話ではない。表現対象との距離感だ。新宿ニコンサロンで本日から始まった、佐藤さんの写真展に行ってきた。
 この被写体の男の目は完全にイッてる。佐藤さんによると、エイズを発症していて言葉づかいも危うかったという。佐藤さんいわく、「突き放すような距離感」。そうだ、この写真に限らず、1993年から96年にかけて、ニュ―ヨ―クを流浪しながら撮影されたホームレスや、薬物やアルコール依存症不法滞在者エイズ患者たちと、撮る側の距離感を表すには、その言葉が一番ふさわしい。
 書き手のぼく自身に、もっとも足りないもの。そして必要不可欠なものだ。取材対象への情熱と冷徹、その両方がバランス良く共存していなくてはいけない。
「スナップ写真」とは、日本では「目に付いたものを気軽に撮影したもの」という程度の意味で使われている。が、英語の「Snap」には、「ピストルをパンと撃つ」「犬がパクリと食いつく、食いきる」という意味がある。佐藤さんの写真は、その獰猛な「Snap」に近い。