食材のもつ性質と調理のロジック〜NHK「おはようホットモーニング」から 

 たとえば、キンピラゴボウを作るなら、材料のゴボウはまな板の上で、ころころと転がしながらけさ切りすると、柔らかくて味のしみた一品ができる。それはゴボウが頭から根っこにかけて繊維質が真っ直ぐに走っているから。
 それを繊維質に沿って縦にけさ切りすると、ゴボウの固い食感は味わえるが味はしみにくい。反対に、縦に走る繊維質を斜め切りすると、繊維質の切り口から味がよくしみるし、繊維質を寸断するせいで食感も自然と柔らかくなる。
 反対に、豚肉は繊維質に沿って薄切りすると、そのモチモチした質感を口の中で堪能することができる。あるいは、斜めにジャバラ切りした豚肉のブロックを、30分ほどコトコト煮ると、肉の脂(ラード)が出て、旨味が溶け出す(多少ごま塩を加えれば、うまいスープになる)。取り出した豚肉を一口大に切り、砂糖とすりおろし生姜を加えて、フライパンで表面に焦げめがつく程度に炒めれば、寸断された繊維質からよく味のしみた、生姜焼きを味わうことができる。
 朝のNHKに出演していた料理人の、鮮やかな手さばきに魅了された。
 食材のもつ性質と、目的に応じた調理のロジック。その組み合わせで、美味しい料理がうまれる。おそらく、これはどんな仕事にも応用できるだろう。インタヴューした素材をよく吟味し、どんな組み立てで、誰に向けた文章に仕上げるか。う〜ん、恥ずかしいけど、おれ、そういう発想に乏しかったなぁ。