見えない身体(1)〜激痛と脂汗 

 禅問答を気どるつもりはない。
 ただ、身体には見えている部分と見えない部分がある。そして見えない部分を唐突に照らしてくれるのが、痛みだ。痛みを通して見えてくる身体の内側というものがある。それは身体のクセであったり、日頃の不摂生であったり、寄る年波だったりもする。そのことについて、少しつづけて書く。
 8日土曜日の夕方、仕事部屋にあるマッサージチェアから起き上がろうとした瞬間、背中に激痛が走った。思わず、床に両膝をつき、机に両肘をひろげて全身を支えたものの、そこからどう動いていいのか。突然の背中の痛みに恐怖心がわき、身体をささえる両腕はもちろん、上体は過度な緊張で力みかえりカチカチになった。そのうち、全身から脂汗が出てきて、机の上のキーボードなどをしだいに濡らしていく。
 とりあえず、腰が痛まない格好でどこかで横になって脱力したい。ただ、奥さんが駆けつけてくれても、ぼくはしばらく動けなかった。ちょうど整骨医院に通いはじめて1週間たった頃の再発である。