{DVD]ピクサー映画『カーズ』〜事実と虚構の交差 

 友人に薦められた本や映画にグッとくるのは、なぜか自分で選んだものよりもうれしい。
 しかも、以前、スティーブ・ジョブズピクサー映画での成功からアップルに復帰する軌跡を追った、ノンフィクション『iCon』を読んでからピクサー映画には興味をもっていた。だが、なんとなく観る機会を逃していたが、彼がほめるんならと、夫婦で観た。 
 才能があるが独善的なレースカーが、ある寂れた町の車たちとの交流の中で、自分にとって本当に必要なものに気づいていく粗筋。伝統あるアメリカ映画の良質なグローイングアップ・ストーリーが、しっかりと息づいている。宮崎駿への敬意を感じさせる背景描写の精緻さや、登場人物の動作や仕草の細やかなリアリティ。アニメーションと実写の複合かと思わせる場面がいくつもある。
 ただ、本編以上にグッときたのは、DVDに付いていた映画の誕生秘話。ジョン・ラセターを始めとするピクサーの製作陣が、じっさいにさびれた米国のルート66を旅して、そこで映画に出てくるような町の人々と出会い、心を揺さぶられていた事実。さらには、ワーカホリックだったジョン自身が、仕事漬けの実人生を顧みて、家族との生活に喜びを見い出していく事実が、彼自身によって語られている。スティーブ・ジョブズ-偶像復活
 そんな事実とフィクションが交差する作品に、自分がグッときたという事実はけっして悪いものじゃない。この場を借りて、あらためてKさんに「ありがとう」と伝えたい。