宮成なみ『奇跡のごはん』、3000部増刷決定! 

先日、めずらしく母から電話をもらった。
 以前、送っていた2冊の本を読み終えたらしい。とりわけ食べ物と健康がテ―マの『奇跡のごはん』は、気に入ってくれたらしい。「すごい女性やなぁ」「彼女もそうやけど、お母さんがすごい人やなぁ」などと、少し興奮気味に、電話口で何度もひとり感嘆してみせた。心臓の手術以来、少し元気がなかった彼女にこそ読んでほしかった本だから、とてもうれしい。
 同時に、自責の念もうずく。
 子どもの健康を願う彼女の気持ちなどつゆ知らず、ガキの頃は豆腐には醤油をどぼどぼと、自家製お好み焼きにはトンカツ&ウスターソース、さらにはケチャップとマヨネーズで特製混合ソースをたっぷりかけて、はげしく怒らせていたことが思い出される。あの眉間に皺を寄せていた彼女の顔つきが、今もありありと浮かんでくる。ただただ申し訳ない。
 昔からリュウマチ持ちの足で市場やス―パ―に通い、毎日献立を考え、薄味一筋で料理を作ってくれた。そんな彼女が費やしてくれた膨大な時間と労力で、ぼくの健康と味蕾はできている。取材で訪れた「味の素」の研究所で受けた味覚テストで、優秀と判定されたぼくの味覚は、彼女によってもたらされた。
 ようやく30歳を過ぎた頃から、ぼくの舌も豆腐がもつ大豆の甘みや、小松菜と揚げのあっさり煮びたしを求めるようになった。そして自分が見つけたと思い込んでいた京都の「名代おめん」は、彼女が子どものぼくを、何度も連れて行ってくれていたことがわかって驚いた。それは耳の後ろが少しくすぐったいような、面映(おもはゆ)い発見だった。
 その『奇跡のごはん』が、本日重版決定しました。3000部の増刷です。読んでいただいた方、どうもありがとうございます。企画提案者としても、ひと安心。明日、母に電話します。

奇跡のごはん

奇跡のごはん