rosa412007-10-15

『怪獣と美術』展〜「ウルトラの父」と呼ばれた男の、怜悧なアイロニー 
 ウルトラマンとその怪獣たちと言えば、ぼくらの時代の子どもたちの心を鷲づかみにしたヒーローと敵役だった。だが、ウルトラマンの敵である怪獣たちには、けっこう人間臭くて、哀愁あるものも多かった。それは子ども心にも受けとめていた。怪獣のくせに水が苦手だったジャミラや、お金に執着する少年が変身した(しかもチビで弱そうだった)カネゴンとかさ。
 ウルトラマンやその怪獣たちを創作した、故・成田亨さんの造形芸術をテ―マとする美術展に昨日行ってきた。
 三鷹市美術ギャラリー(JR三鷹駅南口徒歩1分)での『怪獣と美術』展(今月21日まで)。成田さんのウルトラマンや怪獣の原画などがあり、ウルトラマンも初稿から最終稿まであって面白い。ウルトラセブンなんて、最初の案は、あのアイスラッガーが闘牛の角ばりに横向きだったりして笑える。セブンの着ぐるみを着るスタッフが、6頭身半でガッチリした人だったから、それに合わせるようにセブンのデザインが考えられてたという裏話。あとは、ある怪獣の着ぐるみを再利用するために、後の怪獣のデザインが考えられてたなんて裏話もある。ふふふふっ。
 それに、海獣たちのデザインを編み出した成田さんが、じつは抽象的な純粋彫刻家としての活動と並行して、ウルトラ怪獣たちを最初はアルバイトとして創っていたとは、まるで知らなかった。その作品もあわせて展示されていて興味深い。彼もまた理想と生活との狭間で格闘する人だった。
 その成田さんの書いた次の文章に、ぼくは心惹かれた。
 画家や彫刻家の勉強は自己発見のための自分との闘いであり、デザイナーは同じ美術学校で学んでも。産業のために存在するのだから、自己探究より、他者の目が気になり、他者に好かれるものを求めると指摘。さらにこう斬ってみせる。

 本質的にものを考えないから、焦点がボケて、形の厳しさを知らないから、何でもふやして、ウルトラマンに角を生やしたりする(セブンのことか?=スチャラカの声)。
 昨年から今年にかけて、又、ウルトラマンブームだと騒いで、「ウルトラQ」を作ったようですが、商人だけの集合体から、どんな作品が生まれるのでしょうか。

 「ウルトラの父」とも呼ばれた人が、こんな怜悧なアイロニーを持っていたことが、ぼくには何か嬉しいし、誇らしい。こういう人だったからこそ、ジャミラカネゴンを創りだせたんだと確信する。彼の言葉は、今の世の中にもなお低く重く響き渡ってもくる。