男子、いざ厨房へ(4)小松菜と厚揚げの煮びたし〜突然のDNA現象

rosa412007-10-17

「あんた、そっくりやなぁ」
 昔、実家に戻った折、畳部屋で昼寝をしていたら、おふくろがそう呟いた。
 えっ、どういうこと?思わず僕はそう聞き返す。
「胸の前に両手を当てて寝てる姿が、あんた、お父さんそっくりやんか」
 30代を過ぎた頃だった。思いがけない指摘に、ぼくは慌てた。そんなことを言われたのは初めて。しかも子供時代から正直に言ってあまり好きではなかった、その父親に似ていると指摘されたのだ。耳障りのいい話ではない。
 今年6月には、首の後ろに直径3センチ弱のデキモノができた。大阪弁でいう「おでき」。脂肪の塊がふくらみ、結局、冷や汗ダラダラで切除手術をうけた。これも以前、父親の背中にできて、病院で切除していた記憶がある。忘れた頃、突然現われたDNA現象だ。
 そんな自分が、小松菜と揚げの煮びたしを、いつ頃から好んで食べるようになったのかは思い出せない。たしかに歳のせいか、どんな料理もあっさりした味を好むようになった。その中でも、小松菜と揚げの煮びたしをなんとも美味しく感じる。プチ独身生活が始まり、その煮びたしをすでに3回作った。
 片手鍋にゴマ油を入れ、まず小松菜一袋を適当な長さに切って炒める。そこに、水100ccと、煮干し6、7尾、にんべんのつゆ大さじ2・5杯を加える。最後に、厚さ5ミリほどに切りそろえた厚揚げ1パックを加え、落し蓋と上蓋をして弱火で煮込む。20分で出来上がりと、これも簡単。
 にんべんの甘みを抑えるために煮干しを加えて、少し苦みのある、あっさり味に仕上げるのがオヤジ流。カルシウムもとれる。朝食でも夕食時でも、大好きなサイドメニュー。右上写真は、普段より少し長く30分ほど煮込んだときのもの。我ながら最高の出来栄えだった。
 この煮びたしを作りながら、じつは鮮やかに思い出されたことがある。この甘くも辛くもない味つけは、ガキの頃のぼくが「こんなん、味ないやん!」と口をとんがらせて抗議していた、あのおふくろの味だ。