佐藤卓ディレクション『WATER』展(2)〜誰もが知っているもので「驚かせる」プレゼン力(りょく)

 
 たとえば、入場者に「水」に関連する言葉を携帯電話を通して送信してもらい、それをバーチャルな川の流れの映像に漂わせる。牛丼やハンバーガーの見本の隣に、券売機が置かれていて、入場者が好きなボタンを押せば、その食品を作るのに使われる水の量(牛肉の飼育時までさがのぼって)がわかるもの。あるいは、国内外の水の音や水のある場所の音が、リアルタイムで聴こえる「糸電話」風なもの・・・。「WATER」をテーマにした同展には、さまざまな作家や人類学者さんたちのアプローチが見られて楽しかった。

 
 とりわけ、ぼくが面白かったのは、「ふるまい」と題する、水滴を落とした12枚の皿。来場者が、その皿を下支える棒を動かして、水滴で遊べる趣向だ。それぞれ皿の表面のデザインが異なり、水滴で五目並べができるもの、子どもの両目と口に水滴がたまって動かないもの(皿を傾けると、子供の涙がベロ〜ンと垂れてきて笑える)など。皿の表面を、何かでコーティングしているのだろう。「水の分子は寂しがり屋の浮気性。すぐに隣の分子にくっついては他に手を出す。操るのはあなたです」という解説文も楽しい。


 立体的に格子状のデザインがされている皿では、ミミズ大の水滴が遠心力で皿の周縁を回っても、なかなかその格子のマス目に入りこんでいかない。あるいは、別のお皿では、立体デザインにぶつかり細かくなった水滴が、ナメクジのように動く水の固まりに再び吸収されたり、また細かく砕けたりと、じつに浮気性なんだな(^^)。「へぇ〜」とか「ほぉ〜」とつぶやきながら、その水滴いじりで長時間遊んでいられる。誰もが知っているはずのもので、ここまで夢中にさせてしまう「takram」チ―ムの力量に脱帽させられた。
 しばらくそれで遊んでいるうちに、「寂しがり屋の浮気性」って水のこと?いや、もしかしてニンゲンのことだったりして・・・と、さらなる迷路におちいりそうになったよ(つづく)。