生き物としての元気(2)〜自分をほめてやりたい 

 その嬉しさを説明する。
 Hさんの治療院を初めて訪れたのは去年9月。夏の運動しすぎがたたり、右腰痛で歩くのもままならなかった頃だ。突然の激痛に恐怖心がつのり、全身が過度な緊張で強ばり、自分でもコントロ―ルできなかった。「普通に歩いてください」と言われても、無意識に右腰をかばって、不自然な歩き方になり、自分で身体を傷めてしまうという悪循環に苦しんでいた。

 
 そんなときに受信したのが、東京マラソン出場決定を知らせるメールだった。
 10月、まず歩く練習から始めたのだから。そのことを振り返ると、42・195キロを完走できた自分の頭を、手がしびれるほど撫で撫でしまくりたかった。あるいは、44歳という年齢で初マラソンに挑み、目標タイム内で完走できたこと。生き物としての元気を取り戻せたこと。


 その誇らしさが、今後5年間、さまざまなことにおいて十二分に闘える自分を確信させてくれた。マッサージを終えると、ぼくは無性に肉をむさぼりたくなって、カツどん屋のドアを開けていた。