肩甲骨で走れ(1)〜視点をずらす

 すっごく(ウエストが)細くなったね。
 ぼくの両脚裏がわの、ちょうどふくらはぎの上に座った奥さんが、そうつぶやいた。背筋うんどうをするために、両脚にのっかってほしい、とおねがいしたときのことだ。普段から肩甲骨つかって歩いてるし、走るのもそうやからかな。どっちしても、ごめんな、おれだけスタイル良くなってしまって・・・・・・。もちろん、彼女はぼくのボケなど鼻でわらってとりあわず、無言。ぼくはかまわず背筋をうごかしはじめる。
 

 去年の10月頃から、おそるおそる始めた腹筋うんどうは(腰痛からの復帰時期のため)いちどに100回ほどできるようになった。すると、おなかまわりもグンと締まった。40代なかばでも、からだはあざやかに変わる。かつて「デブなヨー・ヨーマ(世界的なチェロ奏者)」といじめられていた頃が嘘みたいだ。えっ、誰に?
 それは、金哲彦さんの本「3時間台で完走するマラソン」からはじまった。その本の「ウォーキングで体幹を使うコツ」という視点だ。そのコツは、腕ふり・骨盤・着地の3つだと金さんは指摘する。腕を前後に振る際、肩甲骨を真ん中に引き寄せるように動かしながら肘を後ろに引く、のだと。

 
 ここには、おもしろい視点が2つある。
 走るフォームをつくるには、むしろ正しいウォーキング姿勢を身につけること。それに、走る動作にあまり関係のなさそうな肩甲骨の動きをつくることで、骨盤をしっかりつかって走れるということ。それらは、どこか「灯台下暗し」ということわざと似たひびきがある。あるいは、視点のずらし方とか、複眼の思考にも、びみょうにつながっていきそうなワクワク感もある。で、でしょう?(つづく)