探偵!ナイトスクープ(MXTV)〜「アホやなぁ」と抱きしめる(2) 

 3本目は、48歳男性から小林麻美の「アパートの鍵」というレコードを探してほしい、という依頼。探偵が彼の社宅を尋ねて話を聞いていくと、数年前に地元の長野で会社が倒産。経営者だった依頼者は、妻や家族から三行半を叩きつけられ、夜逃げ同然で各地を転々としていることがわかる。実の親にも、長らく連絡をとっていないという。


 探偵は、依頼者とじっくり向き合いながら、相手の心情を吐露させていく。そして長野の実家にも取材、雪深い故郷の自宅屋根で、1m近く積もった雪を黙々と下ろしている依頼者の父親を映し出す。だが、撮影するだけで、依頼者である息子のことは一切告げない。そのVTRに映る父親を観ながら、依頼者は号泣する。
 父親への親不孝に、ボタンを掛け違ってしまった自分の人生に、メガネをはずして彼はむせび泣いていた。ぼくも思わず涙腺がゆるんだ。 程度の差こそあれ、誰もが「こんなはずじゃなかった」人生を生きている。そのツボをツンツンと突かれる。


 昨日の「かんさい〜でんき ほ〜あんきょ〜かい」編と、この失踪中年息子編が、なぜ同じ番組で放送されるのか、理解に苦しむ人が多いかもしれない。だが、大阪人にはすんなりと入ってくる。どちらも「アホやなぁ」と抱きしめ、肯定する対象だからだ。そういう風土が、吉本興業を育み育ててきた。
 立川談志は「落語」を「人間の業の肯定」という。変てこな殿様も、お調子者の町人も同時に笑い飛ばしながら、「アホやなぁ」とその両方を抱きしめる芸である。(おわり)