裸木の夢 

 
 早起きして、昼過ぎから皇居ではしる。
 暖かな日差しの下、点々と桜や菜の花が咲き始めている。東京マラソンを思い出させるジョギング日和。5キロおよそ28分ペースで15キロ。18キロで急に脚が動かなくなったので、無理をせずにゆっくりジョギングに切り替え、かるく屈伸して、残りをウォーキングする。新しい走り方を試したせいで、慣れない動きに体がバテたのかもしれない。幸い、身体の痛みはとくにない。


 行きつけの銭湯の露天風呂でボーッとして、自宅にもどって早めの夕食。それから一人で渋谷へ。映画『潜水服は蝶の夢を見る』はけっこう混んでいた。元有名ファッション誌編集長が突然、植物人間状態になり、そこから一冊の本を書き上げて他界する。実話にもとづいた作品。
 彼は「ウィ」をまばたき1回、「ノン」をまばたき2回で意志表示し、言語療法士の読み上げる単語を選び取りながら、一冊の本を書き上げる。まばたき2万回分の自伝的物語。


 フランスっぽく、ちょいエロチックで、ちょい哲学ちっく。ただ、氷山が崩れる映像をシンボリックに使う場面は余計かな。誰でもいつかは壊れる。どう壊れるかは誰にもわからない。それまでパチンコでごまかすのか、ジョギングで、あるいは仕事漬けの毎日でごまかすのか。あとは好き嫌いの問題。
 神様から見れば、どれも、まばたき1回分にも満たない。