名代『おめん』(京都四条店)〜おもてなしのこころ

rosa412008-04-18


 食事の最後に筍ご飯を頬張ると、両肩からすうっと力が抜けた。
旬の筍の甘みと、昆布だしのよく沁みたご飯。1枚添えられた鮮やかな緑の木の芽の辛味、ご飯に混ぜられた三つ葉のシャキシャキした食感。それらの絶妙なバランスに、思わず脱力させられた。野菜がたっぷり添えられた初鰹のたたき、あっさり八宝菜、空豆の新緑和えの末のメイン。


 朝食さえ食べるひまもなく、菓子パン2個だけ食べて、朝7時に名古屋駅前のホテルを出て電車に乗り込んだときから、夕食はちょっと奮発して、名代『おめん』でと決めていた。その日は岐阜で一件、京都で一件の仕事があった。夕方たどりついた店のカウンタ―隅で黙々と食べていると、頼んでもいない小皿が目の前に置かれた。


「お醤油に梅肉をこして、しばらくつけておいたものにキャベツを合わせてみました」
 えっ、と戸惑うぼくに、色白の温厚そうな30代前半風の彼はこう付け加えた。
「少しお疲れのようにお見受けしましたので」
 梅肉にふくまれるクエン酸で、疲れをとってくださいということ。
 本当は銀閣寺前本店に行きたかったのだけれど、雨模様の名古屋から京都へ、タクシーと新幹線を乗り継いできたので、四条店にしたのだけれど、その気持ち自体をぼくは心の中で深くお詫びした。