舟越桂『夏の邸宅』展〜脳裏にこびりついた両性具有像

rosa412008-07-28



 この夏初めての蝉時雨につつまれる。
 目黒の東京都庭園美術館にたどりつくと、喧騒のエアポケットに入ったような気分。館内に入ると、酷暑からも逃れて、冷ややかで、しんとした空気にホッとする。まさに夏の邸宅に迷い込んだよう。


 数年前に、都立現代美術館以来、舟越さんの楠(くすのき)の彫刻と向き合う。ちょうど、180センチ程度に設置された彫刻と向きあうと、「おまえはどこから来て、どこへ行くつもりなのか?」と問われてる気分になる。ただ、今回は1階入口そばに置かれた、両性具有のスフィンクスに意表をつかれる。同様に、入口手前の白く豊満な乳房もあらわな「戦争をみるスフィンクス」が双璧。


 地面にしっかりと根を下ろした大樹のような、あるいはネガティブにみれば、彫刻の人物をはがい締めにする牢獄のような衣服に包まれていた過去の作品群からの、明らかな変容。乳房や陰茎を剥き出しにした作品は、いったい何なのか。全館をめぐりながら、ずっとそのことを考えていた。思うように言葉がうかんでこない。ふたたび最後に両性具有の像と正対する。黒のストッキングをはいた両方の太腿下が切断されていて、両側から裸木で支えられている。人間というより、馬か牛に近いグラマラスさと白い肌をもつ、宙吊りの、両性具有のスフィンクス。革張りのソファに深く腰掛けて、まんじりともせず見つめる・・・・・・。


 結局、これという言葉をつかめないまま会場を後にした。それでも頭の隅にべたりと貼りついていて、なかなか消えそうにない。