黒沢清『トウキョウソナタ』 

 絵コンテのような画面が雑然とつづく。そんな印象のまま、映画が終わってしまった。恵比寿で、映画『トウキョウソナタ』


 黒沢映画を観るのは、はじめてなのだが、どれもこういうテンポなのだろうか。編集も意図的なのかもしれない。東京のある家族を掘り下げて、世界の今を照射する。その着眼点は面白い。いつでも逸脱できて、なおかつ戻ってもいける。家族のそんな融通無碍さと不気味さ、その絆と単なる慣れの交錯ぶりも映ってはいる。
 だけど、コンセプトが映像の流れに勝っていて、なんかパラパラ漫画でも見せられているような気がした。あまりに雑然とした展開で、感情移入できないうちに、映画が終わってしまった。


 あえて言えば、小泉今日子が、「もう戻れない」と盗難車で走り出す場面にグッときた。