まるで深い川底で長年洗われつづけた、優しい丸みをおびた石のような顔。
今年78歳になる彼の、なんとも愛らしい笑顔と向き合いながら、芋焼酎のお湯割りも手伝ってか、ぼくはうっとりしてしまった。
「まだ息子が亡くなったとは思えないんですよ、ほんとに。だからまだ泣いてもいません」
彼がぽつりともらした言葉に、鼻の奥とつんと突かれる。
度重なる厳しい現実を目の当たりにしてなお、柔和な顔をたもつ。すごいことだなぁ、こういう人がいるのだなぁと、ぼくはまたうっとりしてしまう。
帰りの電車で、ひからびたような顔で眠りこける会社員を見ながら、顔は作品だなぁと改めて思う。