石田徹也『僕たちの自画像』展(3)〜宙ぶらりんの分裂症(練馬区立美術館)

rosa412008-12-19



 今回の展覧会で、もっとも印象に残ったのは「屋上へ逃げる人」と題する作品。
 ビルの屋上の縁(へり)で、手すりの付いた8段ほどの階段を、まるで着ぐるみのように着た男がうずくまっている。左手で赤い非常ボタンを押していて、その背後には「Secon」と某警備会社をパロッた会社の看板が見える。乾いた、乾ききったユーモア。
 注意してみると、屋上の縁にうずくまっているように見えた男の尻と両脚は浮いていて、縁にはそれらの影も描きこまれている。


 屋上に逃げてきてなお、さらなる階段を求めながら、片手では非常ボタンを自ら押す。その構図の両義性は、どこか分裂症めいている。それは、人間関係の煩わしさから逃れたいという思いと、人寂しさにも耐えられない脆さの狭間で引き裂かれそうな、ぼくや、あなたの姿でもある。
 

 しかも、その男は重たそうな階段を抱え、屋上の縁の上で宙ぶらりんだ。(つづく)