NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」〜サッカー日本代表・中澤祐二


 チーム練習後に一人居残り、コーチ相手に基本練習をくり返す。
 コーチが立っている場所に、長身長髪の男は、黙々と、かつ正確にロングボールを蹴っている。ごく単純な練習で、日本代表チームのキャプテンである中澤には、一見不似合いなのだけれど、彼の軌跡を「仕事の流儀」を通して観てきた者には、とてもグッとくるシーンだった。


 小学校6年生と遅くからサッカーを始め、特にセンスがあるわけでもなく、むしろ下手クソで、ディフェンダーしかできなかった中澤。
 高校卒業後、サッカーがやりたくてブラジルに単身で渡り、約1年でオマエは要らないと帰国をうながされ、それでも心を折らずに、かつての高校で後輩達にまじり、ボールを追いかけていたプータローの中澤。
 

 そんな、いくつかの自分に立ち返るための基本練習だった。
 同時に、現在の自分を支えてくれた人たち、あるいは支えてくれている人たちへの感謝。サッカーで生活できていることの喜び。それらを自らの糧にして、自らをさらに高めようとするモチベ―ションにつながっているように見えた。


 基本の反復は感謝と喜びにつながり、未来に向かう意欲を高めながらも、ふたたび基本へ舞い戻る。彼の日常は、見事にきれいな円を描いて充足していた。