寺澤有著『報道されない警察とマスコミの腐敗』(発行インシデンツ)

rosa412009-03-26



 寺澤有くんが、自ら出版した話題作。映画『ポチの告白』を見た、警察関係者などを取材してまとめることで、警察とマスコミの腐敗ぶりを突きつけてくる。現役警察官やそのOB(しかも全員実名)の発言だけに、その説得力は有無をいわせない。内部告発者が、こうして堂々と発言できるようになってきたことでも、世の中の変容ぶりがわかる。


 たとえば、同映画で、派出所警官が自転車を放置して、自転車どろぼうを待つ場面について、元北海道警釧路方面本部長はこう語る。

 わなにかかった酔っ払いを「占有離脱物横領の現行犯です」と言っており、制作者はよく勉強しているなと思ったものです。(中略)同横領罪は刑法犯少年のなかでも大きな割合を占めています。検挙しやすく、交番の点数稼ぎのためのドル箱化しているのです。

 あるいは、愛媛県警巡査部長は、同映画で主人公の警官が、暴力団関係者と癒着して、拳銃を押収する場面について、こんなコメントをしている。

 今村さん(拳銃やらせ押収事件が発覚して逮捕された、元愛媛県警警官)やほかの関係者からはこう聞いています。
暴力団関係者と癒着して押収用の拳銃を提供させるのは、当時は銃器薬物対策室の誰もがやっていたこと。覚せい剤取締法違反事件を見逃すかわりに拳銃を差し出させるのが常套手段で、時には身銭を切って暴力団関係者から拳銃を買っている者もいた。手に入れた拳銃で適当にいい実績をつくりあげていた」
 今村さんたちのことだけが大きく報道されましたが、問題の根はずっと深刻だと思います。

 こんな調子で、ヤミ給与や裏金づくり、あるいは警察と地元マスコミの癒着ぶりが、とても生々しく語られていく。ジュンク堂書店HPで購入可能。ぜひ、事実の力を堪能してみてください。


 辞任問題に発展した、前・外務大臣のへべれけ記者会見が、誰が注意するでもなく世界に発信されてしまう背後には、そんな情報提供する側と提供される側の、「あ・うん」の呼吸がある。それは東京地検の動きと、それを逐一報道する記者クラブとの間にも当然あります。


 そういう視点で報道を見る目をもつことが、メディア・リテラシーの第一歩。警察とマスコミの癒着を暴きながら、それら事実の力をもって、それらの情報の受け手である私やあなたをも、この本は問いただしています。