かすみがうらマラソン(1)〜4月19日(茨城県土浦市)

rosa412009-04-19



 これは、(4時間切り)いけるかもしれない。
 30キロすぎで時計を見たら、約2時間50分。その上、過去3回のフルマラソンより、かなり体力が残っていた。残り12キロを1キロ6分弱ペースでいけば可能と、頭の中ではじき出す。皇居周回の練習でも走り始めなら、キロ6分はかなり遅いペースだからだ。


 コースの両側では八重桜がまだ所々にその花びらを残し、梨農園では白い梨の花びらが日差しを照り返していた。時おり、牛舎や田畑から牛糞の臭いが鼻をくすぐったかと思うと、まるでクーラーみたいな涼風が汗まみれの身体を洗ってもくれた。
 適度なアップダウンのあるコース。老人ホームからの声援や、可愛い女子中学生とのハイタッチ。伴走者と視覚障害のランナーたちへの尊敬とエール。このレースは、国際盲人マラソン大会を兼ねてもいる。


 19回目となる大会のせいか、沿道の人たちもマラソンをよく知っていた。
 軒先に水を貯めた漬物用の大きなバケツに柄杓(ひしゃく)を置いてくれていたり、自宅からホースでシャワーを浴びせてくれる子ども達がいた。とりわけ、30キロから先に梅干やお漬物、おせんべいなどと一緒に、おそらく家中のお茶碗を並べて、水を注いでくれるおばあちゃんなど、さまざまなボランティア臨時給水場所があった。


 マラソンは、走る人とそれを支える人たちのセッション。あらためて、そのことを心地よく体感させてくれるレースだった。


 31キロすぎ、右足のふくらはぎがヒクヒクしだす。
 ここまで走ってきて、足がつってのリタイヤは避けたい。32・5キロの給水地点で、両脚とふくらはぎに水をかけると、少し落ち着いた。その時点で、ここからが本当のマラソンだぞ! そう言い聞かせながら、走るテンポをとるためにキャンディーズの唄を心の中で口ずさむ。よし、その調子だ、粘れ粘れ! と自分にゲキを飛ばす。視界がすこしボヤける。
 

「全身全霊」という言葉が、たしかな手応えをもって下っ腹から立ち上ってくる。
 日常で、この言葉の手触りを感じられる機会はあまりない。


 多少ペースを落としながらも、35キロまで粘ることができた。
 それが今回の最大の収穫。だが、その先で、ふいに緊張感と集中力がほどけた(つづく)。