かすみがうらマラソン(2)〜ささやかに自己新記録

 完走後にもらった完走証には、公式記録とプライベイト記録(スタート地点を通過してからの記録)、それに10キロごとのラップタイムが書かれている。それによると、ささやかな成長の跡が見てとれた。


0キロ〜10キロ :57分57秒
10キロ〜20キロ:55分18秒
20キロ〜30キロ:56分57秒
30キロ〜40キロ:1時間5分48秒
40キロ〜ゴール :15分56秒


 4時間を切るには、1キロ5分40秒のペースが必要だが、30キロまでを平均すると、ほぼそのペースで走れている。30キロから35キロまでも6分超ではいけた気がする。この粘りが、ささやかな自己新記録につながったのだろう。
 課題は残り7キロ。ラップタイムをみると、おそらく35キロからの5キロが、キロ7分に落ち、40キロからの2キロ超は、さらにキロ8分にまで落ちこんだ感じだろう。ゴールタイムは4時間12分01秒と、自己記録を2分強ほど更新!


 ただ、完走証と記念Tシャツをもらい、クールダウンをかねて、人気のない場所をぽつぽつ歩きながら、胸に湧きおこった思いがある。「最後の7キロ強で、気持ちが負けてたんじゃないか」と。


 35キロすぎに失速し、てくてく走りになったのは仕方ない。
 気になったのは、まずゴール前300メートルになったとき、ふいに加速したこと。ゴール近くにたくさんの観衆がいたせいもあるが、それまでのてくてく走りとは別人だった。本能と書けばそれまでだが、肉体的にまだ余力があった証拠だろう。身体はまだ走れたはずなのに、いったん失速した時点で、「心が折れた」とまではいかなくても、「気持ちが負けてた」んじゃないか。


 また、残り7キロ以降、公式の給水所以外に、地元の人たちのボランティア給水所がいくつかあった。思い返せば、ぼくはそのすべてで立ち止まり、水を飲んだり、頭から水をかけたりした。そんなに喉が渇いていたわけではない。走りすぎようと思えば、できたはずだ。


「30キロすぎからが、本当のマラソン
 つまり、本当のマラソンである12キロ強の半分以上で、ぼくは気持ちが負けていた。
 記録うんぬんより、給水の仕方が端的にそれを映している。あれは「逃げ」だ。てくてく走りになった時点で、それまでの緊張感と集中力まで放り出してしまった。35キロ以降の7キロをどう走るか、その間の気持ちを、どうコントロ―ルできるのか。これは、終わらねぇな。(つづく)