吉岡徳仁の男気〜カルティエ特別展「Story of・・・」(東京国立博物館)


 個々のジュエリーの物語を見せる、二重マジックミラーの仕掛けはたしかに面白い。だけど、まさに目もくらむような宝石ばかりを見せられた最後に、吉岡さんがデザインした、静謐(せいひつ)なガラス瓶のフォルムには、心を鷲づかみにされる。サッカーボール型と、タイヤ型(?!)の二種類。その2009年版、カルティエのフレグランスボトルの底に沈む小さなダイヤモンドとのコントラストも、カッコイイ。とても俳句的。


 言ってしまえば、ただのガラス瓶。それを巧みなデザインと技術力で優雅なフレグランスボトルに昇華してみせた点に、日本の競争力のカタチをひとつ見た気がする。それを世界のカルティエの宝石コレクション相手に呈示する点に、寡黙で柔和な外見とは裏腹な彼の男気を感じた。


 会場を出てから、奥さんに一番印象に残ったものを訊くと、「あのインドの王様が身につけてた大きいネックレス。すごい重そうだった」。・・・・・・あのぉ、たぶん一生身につける機会はないと思うので、重い軽いを心配する必要はないと思うけどね。カルティエ特別展、今月31日まで。