お祝い


 週末、ペルー料理づくしで、わが家でささやかなお祝いをした。


 最初の本で取材した子が、この不景気に就職して、晴れて正社員になった。中学三年生の2学期から学校に行かなくなり、中学はなんとか卒業したものの、ひきこもり生活は数年間におよんだ。その頃から興味があって、専門書を読むなどして独学していた、コンピュータ関連の仕事で、自ら人生を切り拓いた。学歴上はあくまで中卒。


 引きこもり支援のNPOをへて、ぼくの知り合いのベンチャー企業で、無給の便所掃除から働き始め、アルバイト、正社員へと階段を上った。今回はそこを卒業して、履歴書を書いて自ら回り、2社から内定を得て、大手化粧品メーカーのWEB制作などを請け負っている会社に決めたという。


 彼の話を聴いていると、採用担当者が、面接時の彼の受け答えをきちんと見極めて選んだことがわかって、とてもホッとした。近頃、なにかとひどい世の中だけど、まんざらでもない。
「以前とくらべると、ちゃんと相手の目を見て、ゆっくりだけど、きちんと話せるようになったね」
 彼が帰った後、うちの奥さんがうれしそうに言った。