仕事で自分をつくる人


 ひょんなご縁から、高度成長期にご活躍された元銀行家の方のお話を伺っている。これがおもしろい。既成概念を嫌い、オンリーワンな仕事への嗅覚が鋭い一方、融資の際には、自分なりの方法論で考えうるかぎりの慎重を期す。仕事の入口と出口の振れ幅が大きい。


 そういうビジネスの姿勢がとても興味深い。
 その方と自分を比べるなんて偉そうなことではけっしてないけれど、さて、自分はどうだろうか、と仕事の仕方を自然と省(かえり)みてしまう。う〜ん、じつに小さい。なおかつ、その突飛さと慎重さの間をしっかりとつなぐべき、辛抱や信念がぜんぜん足りない。つまり、奥行きがない。


 子供時代からお勉強がよくできて、何事につけ如才(じょさい)ないけれども、一緒にお酒やご飯を楽しく食べれそうには到底思えない。そういうタイプの銀行マンとは、その方はまるで正反対。実際、エリ―トコースを歩まれたわけではなく、その振れ幅の大きい仕事で、地方で実績をつまれて役員になられた方だ。


 70歳を超えてなお、その瞳はきらきらとしていて、生き生きと語る全身からバイタリティーが立ち上ってくる。仕事を通して自分をつくりあげる、そんなお手本のような方と向き合っていると、その年齢にかかわりなく素直であることや、謙虚でありつづけることの大切さがこの身に沁みてくる。