高尾山トレイル(2)

 デスクトップが壊れ、仕事の締切も引っ張ってしまい、バタバタしていたら更新できませんでした。遅ればせながら高尾のつづきを―。


 結局、最初の6キロで1時間かかった18キロトレイルは、自測3時間10分ほどでゴールした。約1週間の出張もあって、あまり練習できなかった割には後半もバテなかった。残り2キロのなだらかな下りも軽快に走れた。


 ただ、トレイルを走りなれている人は下りが、初心者オジサンからすれば驚異的に速い。まさに「脱兎のごとく」だ。
 その獰猛な足音が背後から迫ってくると、おのずとストレスが高まり、むだな力みが出てしまう。途中から考えを改め、ふさわしいスペースがある場所で立ち止まり、左右どちらかによけて道を譲ることにした。「ありがとうございます」コールとともに、ぼくの視界を飛び去っていく。かっちょいい!


 下り斜面の樹々のあらわに伸びる根っこを、小刻みなステップで走り抜ける感じ。
 雨にぬかるんだ山道で転ばないように、たえず神経を尖(とが)らせていなければいけない、あのピリピリした感覚。
 森閑としたつづら折りの山道にそぼ降る雨の音と、「はあはあ」という自分の吐息だけを友とする透明な時間。そして、山の湧水を両手でうけて飲みほす給水。
 心臓の鼓動と筋肉の疲労感―それ以外は何もないむき出しの、笑ってしまうほどちっぽけないのちの躍動感。


 平坦なアスファルト道路ではけっして味わえないトレイルの醍醐味。それがブームになる理由を少し体感できた。(おわり)