「不平の合唱団」テレルヴォ・カルレイネン+オリヴァー・コフタ=カルレイネン(森美術館2月28日まで)

 

 不平も不満もたぶん生涯なくならない。
 だから眉間にしわを寄せてブツブツウダウダいうよりは、大声で歌ってしまったほうがいい。そのほうが健康的だし、他人が聞いても共感しながら笑える。自分のそれらも相対化できる。
 そもそも不平や不満を口にしている顔はカッコ悪い。始末が悪いのは、それによって「おれはわかってるんだぜぇ」と他人を見下ろしてるような態度。あんまり言いすぎて顔そのものが不満げな表情として定着している人もいる。本人がそれに無意識なこともふくめて、やっぱりカッコ悪い。メディアをはじめ、この国に圧倒的に足りない視点だ。


「不平の合唱団」は世界各地の市民に、その不平や不満を大声で歌わせて合唱にしてしまうというプロジェクト。フィンランド人夫妻によるものだ。彼らが語る日本のイメージや東京観も興味深い。
 笑い飛ばすことだけが、それらを前向きなエネルギーに換えられる。「どこもかしも広告だらけでうんざりだ」とか、「いい男はみんな結婚してるぅ」とか、どこの不平不満も人間関係や政治、行政ネタが多くて似ている。


 どうやら今回の東京でいったん最後になるらしい。東京版は、なぜか全員白いマスクをして登場していた。除菌および抗菌好きの日本人をバカにしているようで、その冒頭でぼくはけっこう笑えた(以下の動画は一部)。