3日先のことはわからない


 なんでアナタは、この不景気に、なおかつ、会社員でもない不安定な社会的身分にもかかわらず、そんな脳天気に笑ってられるの?――あらゆる修飾語をとっぱらって要約すると、長年の友人に先日そう訊かれたことが思い出された。
 だって、それが自分にとっては前提だから、イチイチ気にしても仕方ないやん。そしたら楽しいときは笑い、悲しいときは泣くか、泣くのを我慢する、つらいことは一日で忘れる。そんなことしかないやん!とかなんとか、そのときは答えるしかなかった。


 上海市内にあるヒーリングサロンで、ある日本人の方からこんな話を聴いた。彼女がネット記事で最近目にとまったという一説。
アメリカ人は生活費3年分の借金があっても買い物ができないと文句をいい、日本人は3年分の貯金があっても、仕事がなくなったらどうしようと心配し、中国人は3日先のことがわからなくても今日は楽しいという」
 うまいこと言いますねぇと、ぼくは感心した。


 ただ、誤解してはいけないのは、中国人についての言及部分。その背後には、第二次大戦終了後の中国共産党と国民党による内戦、共産党政権下での文化大革命が生み出した混乱、それとは180度違う社会主義型資本主義路線の現体制という軌跡があるということ。


 そういう大混乱な世の中を血と涙を流しながら生き抜いてきた中国の人たちの逞しさと強いエネルギ―を、ちょっぴり冗談めかして表現していることを、頭に入れておく必要がある。
 ぼくは最初他人事としてこのアフォアリズムをひとしきり笑ってから、ふと自分がまぎれもなく中国人タイプだと気づいた。