や、やっちまった

 早朝7時すぎ新宿発の小田急線急行列車にすわり、やにわに大会要項を取りだしたときだった。「午前8時までにエントリー受け付けは済ませてください」という一文が目に飛び込んできた。急行だと目的とする駅まで70分近くかかり、そこからバスでハーフマラソン会場まで20分と見ていた。


 いかん、前の週の大会と、スタート時間を混同していた。
 ぼくはあわててその電車を降り、買ったばかりの切符を手数料100円を払って、JRの東京駅行きに交換していた。朝5時半に起きて走る気満々なのに、このまま家に帰るのも癪(しゃく)。そうだ、皇居で30キロ走ろうと頭を切り換えていた。雲ひとつない晴天で、まだ朝7時過ぎだったし。


 こういうのも「不幸中の幸い」と言えるか。
 あのまま1時間半かけて、会場入りまでしてたら、もっと惨めな気持ちになったにちがいない。自分のバカさに嫌気がさし、自己嫌悪で、しばらく走る気がうせていたかもしれない。そう思えば、小田急線が発車する前に、大会要項を見ていてラッキーだ。
 1周5キロの皇居を、まあまあマイペースで6周して2時間49分でゴール。皇居前広場の芝生を裸足で歩いてクールダウン。ごろんとひっくり返ると、今朝やっちまったことなどすっかり忘れてしまっていた。