生涯いじり飽きない玩具

「会社って何だろうって考えたらですね、結局は自分の心の中にあるもんだなって思ったんです。それは社員たちの心の中にもあるだろうし、わたしの心の中にもあって、それぞれの『会社』は違っていて当たり前でね」


 よく日焼けした顔を健やかにほころばせながらその方が言われた言葉に、「まいったな」という気持ちと、「これはおもしろい本になるぞ」という気持ちが交錯した。そしてしばらく黙って、その言葉に耳を傾けていた。


 彼の言う「会社」は、「夫婦」や「仕事」や「いい人生」にも置き換えることができる。そこに正解はなく、一方的な不満や愚痴は許さない厳しさと、当事者意識も否応なく求められる。こういう言葉づかいをされる経営者には、今までお会いしたことがない。たとえば、米倉ボクシングジムの米倉健司さんや、バット職人の久保田五十一さんに似ている。ぼくなりの言い方をすれば、仕事を生涯いじり飽きない玩具にしてしまった方々。


 先の日誌(id:rosa41:20101122)で書いた、ある経営者の方に、仲介の労をとっていただいた方同席の下でお会いした。幸運にも、仕事をご一緒にさせていただくことに決まった。同時に、ご仲介いただいた方のご支援があったからこその結果だとも痛感させられた。


 深夜、上記のお二人へ御礼状を書き上げて投函し、寝酒がわりに30年モノの梅酒をちびちびやりながら、冒頭の言葉をふたたび思い返してみる。まだ誰も読んだことのない本の、最初の読者であることをひとり噛みしめる。