しみるゼラニウム

 昨年暮れ、お正月の花とは別に、リビングテーブルと洗面台にそれぞれ置く小さな草花を買った。新年をむかえる家内に、草花の緑葉とその息吹きがほしかったから。その中のひとつにゼラニウムの鉢があり、今それはクリーム色の洗面台に置いている。


 花びらより一層鮮烈な赤とオレンジとの中間色の、その滴るような蕾(つぼみ)に心惹かれて買ってきた。鼻にツンとくる癖のある青臭さを承知の上で、無機的でもある洗面台にこそ、そのたぎる色彩が必要だと直感した。
 この厳冬の中での鮮烈な赤といえば寒椿なのだが、なぜか今年はゼラニウムのほうに心が動いた。それは昨年の猛暑で、ウチのベランダのゼラニウムの鉢が全滅させられたことも理由の一つだろう。


 だが、それだけじゃない。
 ゼラニウムは、四季を通じてその花を咲かせつづける強靭さをもつ。夏の暴力的な暑さにも、冬の凍てつく寒さにも屹立する。人に好かれないその青臭さも、いわゆる「空気を読まない」命のほとばしりだととらえ直せば、ゼラニウムが今の自分の心と目には一番しみる。