五月の花

 ライラックの花が、うちのベランダで咲き誇っている。
 かつては1メートルにも満たなかったのだけれど、もっと日差しを浴びようとその枝を少しずつ伸ばしていき、今では全長1・3メートルほどある。そのうえ、枝々の高低差も50センチほどあるために、小さな噴水めいた咲きっぷり。


 毎朝、体操を済ませてからベランダに出てあぐらをかき、腹式呼吸をするときに、その香りがムッと鼻をついてくる。香水に向きそうな甘さと、たぶらかされそうな強引さがある。花びらそのものは2センチにも満たない、小さな花なのだけれど群れ咲いているせいだろうか。


 一見控えめそうなので何度か軽く誘ってると、じつは自己主張が強く、気がついたら、男のほうが振り回されてしまっているタイプか。まあ、いずれにせよ行き先は「かかあ天下」だから、あくまで遅いか早いかの問題だけどね。


 先日、奥さんの友だちが遊びにきたとき、ウエルカムドリンク代わりに、枝先を切って小さな花器に活けてみたら、たちまち10畳ほどのリビングがその香りで満たされてしまった。