渋沢英一著『現代語訳 論語と算盤』(ちくま新書)

 まず、タイトルがいい。
 そして40代後半になってこそ、沁みる言葉というものがある。その生涯で470社もの会社を設立させた人物ゆえの余裕とも読めなくもないが、「論語」を自らの指針とした彼の人生観とも読める。旧くて新しいからこその古典。本書の中でもっともグッときたのは、この着想。頭の先から足の指先までムムムッと勇気づけられた。

人は、人としてなすべきことを基準として、自分の人生の道筋を決めていかなければならない。だから、失敗とか成功とかいったものは問題外なのだ。かりに悪運に助けられて成功した人がいようが、善人なのに運が悪くて失敗した人がいようが、それを見て失望したり、悲観したりしなくてもいいのではないかと思う。成功や失敗というのは、結局、心をこめて努力した人の身体に残るカスのようなものなのだ。

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)