遅い田植え終了

 徒歩7分の場所にあるスーパーで簡単に買えるお米を、みずから無農薬で作ってみる。それは「商品」のひとつとして並ぶお米が本来経てきている時間と労力を、あらたにたどり直すこと。「美味しくて大好きな」お米を、「収穫までが大変だけど美味しくて大好きな」お米へととらえ直す作業でもある。


「収穫までが大変だけど」が加わることで、「美味しくて大好きな」が背筋をピンと伸ばす。その切実さもグンと増す。とにかく見違える。お米の奥行きが、そこに関わった人たちの取り組みとして感じられるようになるからだ。ひそかに「田んぼ想像力」と呼んでいる。お金をかけずに、手間暇と汗と愛情をかけることがもたらす力だ。


 そういった意味で、葦原(あしはら)だった耕作放棄地からの草刈りと、地中を縦横無尽に走る地下茎を掘っては引っこ抜く作業をへた開墾田んぼは、まさに究極の田んぼ想像力を、ぼくたちに授けてくれることだろう。
 整地後も水がなかなか貯まらずに畑にしか見えなかった土地は、仲間たちの努力の甲斐もあって、やっと田んぼになった。昨年より小さいけれど、その分だけ愛おしい。