福田繁雄『DESIGN 西遊記』

 きわめて本質的であることは攻撃的でもある。
 そのことを、福田さんの本を読んで教えられた。黄色の背景に、戦車の黒い大砲から出たはずの黒い弾丸が逆さまに戻っていく瞬間を描いたポスターを、どこかで見た人も多いはずだ。表題が「VICTORY」という捻(ひね)り方も気が効いてる。


 この本に「握手の意味」と題する文章がある。そこに絆創膏だらけの握手や、握手する手が安全ピンでつながれているイラストがあり、しかもタイトルは「FRENDSHIP」。
 まいった!信頼の証であるはずの握手に、不信感や権力、もしくは裏切りや儀礼的なものまでを見抜く。それを見てはじめて、あっ、たしかに!と手を打たせる眼力に恐れ入った。それは有無を言わせぬ、暴力的なエネルギーさえ感じた。

なんのとりえもないと思われがちな、日常の行為や平凡な形の中に想像を超えた強い視覚へのエネルギーがかくされていることが多い。それが、ごく自然の日常的であればあるほど新しい効果が生まれるといえるだろう。
             (「握手の意味」より抜粋引用)

福田繁雄DESIGN才遊記 (ggg Books別冊 6)

福田繁雄DESIGN才遊記 (ggg Books別冊 6)