佐野元春『欲望』がシンクロする島国

 かなり以前に生まれた歌が、ある時代の、ある時期の世の中の空気にピンポイントで突き刺さる。そんなことがあるんだぁと、テレビで佐野さんの『欲望』を聴きながら思ったら、ふいに涙腺が熱くなった。佐野さんはこんなふうにシャウトしていた。

これからどこへ行こう? なんにも見えない
これから何をしよう? 誰にも答えられない
君がほしい

 
 東日本大震災でいったんキャンセルになった、佐野さんの30周年記念ライブ。それが6月に、東京・国際フォーラムで行われたときの模様が、ブラウン管に映しだされていく。佐野さんがNYで作った『ビジターズ』からも何曲かが演奏されて、今の空気をそこかしこに感じさせる歌詞が耳にとまった。『欲望」はこんなふうにつづく。

ふくれてくだけの欲望 何もかもが手に届かない
そんな気がするのさ  君がほしい

 被害者面ばっかすんなよ、おまえも、おれも、加害者でもあるんだからさって。