藤原新也『書行無常』展

 その写真集のあとがきに目がとまる。
 文章は書くものではなく、打ち込むものになったという視点から、デジタル情報に包囲される中、アナログな手段として筆をとり、書道と写真とのコラボレーションに至ったという趣旨が書かれていた。福島・インド・そして上海での撮影と書道のセッションをまとめた一冊。都内での同展も、その写真集の発刊をふまえてのものだ。「書行無常展(3331art chiyoda)」(銀座線「末広町」駅そば)。


 その殴り書きの作品について、とくに書くつもりはない。写真と書道作品には、ただただ、藤原さんのほとばしるパワーが叩きつけられている。


 ただし、そのアナログへの嗅覚には共感する。
 走る度に違う体の軽重、糠(ぬか)漬けパックの毎朝違う手触り。ベランダで座禅を組みながら感じる朝の空気の寒暖。風呂あがりのストレッチで感じる、見えるのに見えない体の硬軟。下手を承知で書く、取材者へのお礼状――。
 デジタル情報に心身ともに占拠されないように、そういうアナログ的なものにいっそう意識的でありたいとスチャラカも思う。

書行無常

書行無常