小泉今日子の「複雑」

 ひょいっと駅で抜き取ったタブロイド紙に、小泉今日子のインタヴューが載っていて、読みすすむうちに次の箇所で止まってしまった。

子役って泣くのがうまい子が多いけどなぜかなって、先日、古田新太さんに話したんです。そしたら古田さんが『子どもはまだ感情が複雑じゃないから、泣ける理由は数えるほどしかないんだよ』っておっしゃって、さすが古田さんですよね。大人になると、うれしくても哀しくても嬉しくても泣くし、泣かないでいることもできる。そう考えると子どものころは楽だったような気がするけど、その代わり複雑な思いを表現できるのは大人の醍醐味だよね。それは演技だけじゃなく、文学や音楽でもそうだし、生きていれば、みんなそうでしょう」


 すると得意の反省癖がむくむくと頭をもたげてきて、こういう感情の複雑さや、自己顕示と自己嫌悪の狭間をゆらぐ自分を、今までずいぶんとぞんざいに切り捨て、上っ面の楽天主義でフタをしてきたなぁという思いがふくらんだ。