坂本義和「3・11と日米開戦70年」(東京新聞12月8日付け朝刊11面)


福島第一原発事故でも『原子力ムラ』という言葉が使われています。ムラは集団です。だから事故が誰の責任なのか分からなくなる。また分からなくするのです。決定権をもつ者の責任を問わない民主主義はあり得ません」
 国際政治学者・坂本義和さん(84歳)の洞察力に衰えは見られない。上記紙上でのインタビュー記事の一部。


 彼が一連の震災報道でもっとも気になったのが「がれき処理」という言葉。なぜなら、「がれき」の中には行方不明の人の骨片や、被災者にとってはかけがえのない思い出の品が混じっているから。それを建物の残骸同様にモノ扱いして処理しようとする「がれき処理」という言語感覚に、坂本さんは「棄民」を見出す。


 それは彼の中では「解決策を見出せない沖縄の基地問題」にもつながっている。
「『がれき』という言葉を当たり前に使う感覚が、沖縄の問題にもつながる。沖縄の人ならどう思うだろうかという感覚が消えている。棄民を忘れる感覚は、権力者だけでなくわれわれの中にもあります」

 
 彼の「棄民」観の原点は、大学教授の父とともに、幼少期の約10年間を過ごした中国・上海で見た日本人負傷兵約2000人の光景。「この人たちも、そして自分も、国から捨てられた棄民なのだ」と感じたという。