青梅マラソンの快感

 雲ひとつない、きっぱりとした空を見据えて走る。
 適度なアップダウンを脚で味わい、丘陵地帯の広々とした眺望を愛でながら、飛ばすな飛ばすなと自分に言い聞かせる。威勢のいい和太鼓のビート、公式のもの以外に、あちこちにできる善意の給水所、子供たちの歓声、応援なのか日向ぼっこなのかわからない老人たち、ランナーにハイタッチを求める中高生たち、歴史ある大会が醸し出す空気がどれも楽しい。

 
 集団のペースに包まれている感覚が心地いい。
 どこか波乗りに似ていて、周囲のランナーが刻むリズムや吐息、鼓動に包まれながら、同時にその上を滑走している気になる。そのためについついオーバーペースになる。


 その報いは、27キロ過ぎに受けることになるのだけれど、それは自分が奔放に流れる川の一滴になったようでもある。あの感覚は、都心のスクランブル交差点では味わったことがない。
 たぶん、辛くてきついのにもかかわらず30キロも走る、という馬鹿さと愚直さを共有するランナーたちが生み出すオーラゆえだろう。