池田晶子『14歳からの哲学』〜かっこいい大人
オレって駄目だなぁと。
近頃、そう痛感させられることがいくつか続いた。
そんなときに、柄にもなくこんなことを考えてしまう。いったい、どうやって「大人」になっていけばいいんだろうか、と。
相手の言葉や思いを、心の手前ではなく、奥までしっかりと引きつけて受け止めて、ちょっと吟味してから投げ返す。歳だけ食っているくせに、そういう技術や度量がない。
そんなときに、池田さんのこんな一節に出くわして、そう、まさに出くわして、ああ〜っとため息がもれた。
お父さんやお母さんの気に入らないところ、ダメだなぁと思うところを、ああ、そういう人なんだなと思って、受け容れてみてごらん。そして、この人はどうしてこういう人になったのだろうと、彼らの人生を想像してみてごらん。それこそが、子供が親から学ぶことができる人生の真実なんだ。親が子供に教えようとして教えることなんかより、ずっと深くて、ちょっと哀しいものなんだ。
この本はとても難しい。
一見、やさしい言葉で書かれてあるけれど、何度もよく噛まないと甘みが出てこない玄米みたいに、じつは幾重にもいろんなものに覆われている。行間も広くて深い。その芯の部分にまで、なかなかじかに触れられない。
でも、この一節には心をムンギュとつかまれてしまった。こんな言葉を14歳に向かってまっすぐに書ける人は、まちがいなく大人だ。
- 作者: 池田晶子
- 出版社/メーカー: トランスビュー
- 発売日: 2003/03/20
- メディア: 単行本
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