相手の顔が見える玄米〜こうざき自然塾の無農薬米

 玄米食に切り換えようと思ったとき、ぼくの頭には一人の農家さんの顔があった。昨年11月、千葉県神崎町にある豆腐屋さんに取材に出かけたとき、関係者の一人としてお話をうかがった方。

 20歳年下の取材者相手にも終始、丁重な受け答えをしてくださったのにも驚いたが、自らが手塩にかけて育てている大豆の話になると、まるで子供が大好きなハンバーグについてしゃべるような目が心に残った。というか、ヤられた。積み重ねてきた年齢を自分の輝きに変えられる。そんな人は滅多にいない。こうざき自然塾代表の鈴木一司さんはそんな一人。

 ご飯好きの自分が、こういう方が作られた玄米を食べられる幸福を思う。玄米を食べつけると、白米の甘さがどこか薄っぺらく思えてくるのもおもしろい。噛めば噛むほどいろんな味がにじみ出てくる。胚芽をプチッと潰すように噛む感じにも、だんだん馴じんできた。

「相手のl顔が見える関係」という言葉は、取材を通して何度も聞いたけれど、その安心感とはこういうことだったのかと、あらためて痛感する。言葉を自分の血や肉に変えるには、やはり、そういう実感が欠かせない。

 東洋医学の用語らしいが、好転反応という言葉を最近覚えた。
 整体治療を受けたり、玄米食をはじめると身体が変化する際に出る反応のこと。尾篭(びろう)な話で恐縮だが、玄米には排毒作用があるらしいが、小便が一時的に臭くなり、それが終わると、じつにしっかりとした形の大便が出るようになってきた。日々食べるもので身体が変わっていく。その過程をニヤニヤしながら見守っている。