simple beautiful〜新宿トークイベント

 ふいに立ち止まる人を見つけてヤッタァ〜と思い、しばらくして立ち去る人にガックリする、気持ちがそんなアップダウンを盛んにくり返す。紀伊国屋書店新宿南店3階のイベントスペースで、ゲストの丹羽順子さんの話に耳をかたむけながら、ぼくはひそかにそんな葛藤をしながら、路上で演奏するミュージシャンのような気分を味わっていた。先週7日金曜午後7時すぎのこと。


テーマはハッピーシュリンク(幸福な縮小)。経済の縮小が避けられないのなら、投票目当てに経済成長論の幻想をいたずらに振りまかず、むしろ幸福な縮小の可能性をこそ探ろうということ。


 タリーズコーヒー隣の広さ10畳ほどのスペース、与えられた時間は45分。拙著最後の第六章に登場していただいた丹羽順子さんは、ちょうど2日前に、水道も電気もないタイ北部にあるパーマカルチャーのコミュニティから帰国されたばかりで、出演を快諾してくれた。この日、彼女の話はとても示唆的だった。

「改めて自分の章を読み返してみて、なんかずいぶんと慌ただしく、バタバタしていてカッコ悪いなぁと思っちゃいましたね」


「ほんとうに誰に対してもウェルカムなタイの田舎から東京に戻ってくると、まず、電車の中や街で人と人が互いに遮断し合いながら行き交っている感覚に、すごく戸惑いを覚えますね」


「いくらゆっくりでも、あるいは早くても、どのみち、それが同じ方向に進んでいるんだとすれば、今むしろ本当に必要なのは、前向きにバックすることなんじゃないかって。かつて政府がクールビズを宣言したら、多くのビジネスパーソンたちが夏にネクタイを外したように、『皆さん、1週間から1ヵ月くらい職場をサボっちゃいましょう』ぐらい言っちゃったほうがいいんじゃないでしょうか」

 約7ヵ月ほどで、彼女はずいぶん遠くに行ってしまっていた。当日の模様は、同店HPのイベント欄でストリーミング映像がアップされますので、あらためてお知らせします。ご興味のある方はご笑覧ください。新宿南店の店長さんやトークイベント担当のKさんにも、この場を借りて御礼申し上げます。


 先の「土と平和の祭典」では拙著の手売り販売、そして書店内パフォーマンスと、拙著のおかげで新たな当事者意識を鍛えてもらっていることに感謝したい。イベント終了後、丹羽さんからタイ土産のロウソクをいただく。その小さな赤いカードは、「ますますsimple beautiful ライフを!」と結ばれていた。