きんぴらごぼう

 朝からきんぴらを食べられる幸せだな、ありがとう、知人と下北沢にスープカレーを食べに行くとバタバタしている彼女にそう話しかけると、でも少し固くない?という返事が返ってきた、いやとくには感じないけどね。


 文章がだいぶ柔らかくなったね。数日前、先達のルポライターであるAさんからお電話をいただいた。淡々としているけれど、ただのインタヴューでもなくて、書き手の眼が感じられて、昔なら『思想の科学』に連載してもよかっただろうけど・・・、今はもうなくなってしまったけれどね―
 自分で書くと少々面映いが、私からお送りした拙著へのご感想だった。


 生まれ初めての学生寮暮らしの頃に手にした朝日ジャーナルで読んだAさんの記事を読んで、ぼくは韓国のハンセン病のことと、その回復者たちが同国内の奥地に養鶏や養豚をやりながら自活する村が100近くあること、そこに大田市にある大田大学の学生サークルと日本の社会人や学生が、道路舗装などのワークキャンプが毎夏行われていることを知った。そして彼に手紙を書いて、翌年の夏、それに初参加することになる。


 あれから30年近い時間が過ぎた。きんぴらの旨味は、あのしゃきしゃきした歯ごたえと苦みと辛みの絶妙なバランスにあることが、ぼくもようやくわかるようになった。