病みつきのマトンマサラ〜西荻窪「ラヒ・パンジャービ・キッチン」


 西荻窪で休日ランチと言えば、薬膳四川料理の「仙の孫」か、パキスタン濃厚カレーのラヒ・パンジャービ・キッチンか。それが、うちの夫婦の究極の選択。曇天の今日はあのマトンマサラに決めた。2、3カ月前に初めて行ったとき同様、今日も一番乗りでした。


 野菜、豆、砂肝、マトンマサラと4種類のカレーを注文。ニンニクがよく効いた豆も、グニュグニュになるまで煮込まれた砂肝も、絶妙な旨味の野菜カレーもそれぞれに美味しいのだが、やっぱりマトンマサラ(写真の奥側、手前は砂肝)!二枚腰ならぬ、三枚腰ぐらいの奥行きを感じさせる濃くがある。襟元をつかまれて引きずり回されてしまう料理って、なかなか巡り会えない。


 うちの奥さんが、「イタリアンのオッソブッコ(子牛の骨付きスネ肉を煮込んだ料理)みたいなものだよ」と言っていたが、たしかにあの骨髄スープの妙味に通じるし、実際に骨付き肉片も顔を覗かせていた。
 そしてマトン嫌いの彼女にさえ、先入観から肉はどうしても食べられないけれど、たしかにあのカレーが一番美味しいと言わしめるのだから。あと辛さを選べるのだが、その基準が「大・中(普通)・小」というのも笑える。辛いのが好きな人は、「大」でも大丈夫なはず。


 また、どのカレーにも生のコリアンダーが少々載っけられている。一見ミスマッチなのだが、このクセのある味がどのカレーにもよく合い、なおかつ病み付き度合いをさらに引き上げてもいる。全粒粉製のナンももっちりとした食感で、それぞれのカレーを控えめに引き立てている。
「骨ごと入れて、かなり時間かけて煮込んでるからね」
 会計時、マトンマサラの美味しさの秘密を尋ねると、狭い厨房にいたラヒさんらしき人がそう言って笑顔を見せた。
 ある意味、恋愛も誰かに病みつきになることだけど、料理の場合はその食欲をかき乱されながらそそられるだけで、あとで心を傷つけられたり、何か大切なものを失ったりする心配はない。