はだかの若大将〜『粉飾の「ヒーロー」堀江貴文 彼がいまだにわかっていないこと』ライブドア株主被害弁護団著(インシデンツ)

  日本人は”ヒーロー”好きだなぁと、出所後のホリエモンをめぐる報道などを尻目に思っていた。出所後の彼の著書で、なぜかヒット中の『ゼロ』をアマゾンで検索すると、読者レヴューには、ざっと見た限りでは、「粉飾決算」の文字がなかなか見つからない。もしかしたら、忘れているのだろうか?


  本書でも指摘されているが、彼が社長当時、その会社は3億円強の経常損失を、50億円の経常利益に粉飾決算した張本人だ。被害者は株主約22万人に及ぶ。かつて企業買収を繰り返す中で、「株主の利益」を錦の御旗のように振りかざしてきたのは、堀江自身だったにもかかわらず、だ。


  しかも、その粉飾決算を指示したことをメールで残しながら、その事実について一貫して「知らない」と無罪を主張。実刑確定後も、株主に対して何の謝罪もなく、「ダイエットしてきます」と開き直って刑務所に収監されている。
  だが、本書にも書かれてあるが、元株主たちが起こした損害賠償訴訟の裁判の中で、堀江自信が粉飾を指示していたことはすでに明らかにされている。


  本書は、そのライブドアの元株主たち約3300名が起こしたマンモス訴訟の経緯をまとめた一冊。地味でわかりにくい損害賠償訴訟の経緯を、元株主の原告や弁護団の小さな物語を積み重ねることで噛みくだき、ひとつの読み物に昇華している。


  事件当時よく言われた「株式投資は自己責任」という株主批判については、それが正確な決算や財務内容の公開を前提にしている点に触れ、的外れだと繰り返し指摘している。
  粉飾決算を「ちょっとした悪戯」程度にとらえているホリエモンファンもいるようだが、それだと株式市場そのものが成立しないことを、もう少し冷静に考えたほうがいい。


  刑務所で大量の本を読んだらしいが、残念ながら、粉飾決算に関する本は一冊も読まなかったらしく、出所後も22万人の元株主たちへの謝罪の言葉を口にしていない堀江本人と、その著書『ゼロ』の読者の皆さんに、御一読をおすすめしたい。ちなみに本書の腰巻きは黒地に白抜きで、こう書かれている。


『ゼロ(チャラ)』になったと思っているんですか、堀江さん。