ドM魂〜人生初の50キロ走


    走り終わって芝生の松の木陰に寝っころがると、裸足から両ふくらはぎにかけて血管がどくどくと波打っているように見えた。我ながらちょっと気味悪かった。それでも5月の涼しい風は、北の丸公園の水道水を頭から浴びた頭や顔をひんやりと撫でてくれる。しばらくすると、今度は右足が気持ち吊りそうになって少し慌てた。
    

    先の日曜日の最高気温26度の快晴の下、約5時間38分かけて人生初の皇居50キロ走練習を終えた。正直に言うと、周回5キロを8周した時点で止めようかと揺れた。でもレースの3週間前に50キロ走を一度だけ走っておきたかった。ゆっくりちんたらチンタラ走っても、35キロ過ぎ頃から下半身がどんよりと重くなった。


    これが最後のきつい練習だと揺れる自分に言い聞かせ、まずは終わった後、行きつけの超濃厚鶏白湯(バイタン)ラーメンをむさぼり食べるぞと、そのビジュアルを必死で頭に思い浮かべて前進する動機付けにしようとした。幸い、半蔵門近くの公園の水道水がとても冷たくて、頭から浴びると心底生き返ったような気持ちになり、そこから三宅坂への下り坂を向かい風を受けながらゆっくりと駆け下りていけた。


    9周目の国立近代博物館前からの上り坂では、即興で「ドM魂」という歌をつくり心の中でひとり歌ってみたりした(「ドレミの歌」を、よりリズミカルなテンポで)。「ドMの歌が 聴こえてくるよ ど・ど・ど〜 M・M・M・M ド・ド・ド〜」。あるいは、もうひとつの心のカメラを、坂道をのぼっている自分の頭上10mほどの高さに想像力で設置し、必死な自分を少し客観視してみることで、気持ちの余裕を擬似的につくり出そうともした。我ながらあれこれと思いつくものだと感心する。その3日後にゼッケンが届いた。