場外ホームラン〜今日マチ子・藤田貴大・いとうせいこうトークショー(表参道・ABC本店)

COCOON

COCOON

    「わたしは、たぶん戦争になったら、簡単に世の中の流れに引っ張られていっちゃう情けないヤツだという思いがあって、でも物語の主人公はもっと強くないといけないし、その狭間でオタオタしながら描いていました」
 

    沖縄戦の舞台となったひめゆりの島で亡くなった女性看護士たちを題材にした漫画『COCOONコクーン)』についてそう話す、今日マチ子さんの言葉にドキッとさせられた。
    

    今夜、青山のABC本店で行なわれたトークショーでのこと。戦時下にあっても手鏡をひっきりなしに覗いたり、同性の先輩への憧れを嬉々として語る登場人物たちの少女っぷりをきちんと描きこむことで、その後、石塊で頭を叩き割って自決したり、爆弾に殺(や)られて内臓を露にしたりする彼女たちとの対比が、よりいっそう冴え冴えと映える。愛らしい生とむごたらしい死。そのコントラストによって戦争を凝縮させた作品の背後には、そんな想像力の葛藤があったのか、と。


    今夏発売の『いちご戦争』は『COCOON』の姉妹版か。登場人物たちが終始無言の作品では、果物のイチゴが少女たちの流血やこぼれ落ちる内臓の隠喩として使われている。よりファンシーさを高めることで、作品としての純度と強度を上げている。場外ホームランのごときイメージの跳躍力。

いちご戦争

いちご戦争