実りの食卓〜最後の新米


    モチモチしてて、普段食べてる玄米より、やっぱりおいしいね。いつも田んぼ帰りの作業着に「臭い臭い」を連発して顔をしかめていた彼女が、めずらしくホメてくれる。もちろん、悪い気はしない。たしかに心地よい歯ごたえと、胚芽のツブツブ感のアクセントが絶妙。玄米独特の甘みが深い。


    内臓が苦くさえない焼きサンマと大根おろし、田んぼ近くの産直野菜販売所で買ったたくましいナスと、苦くない万願寺唐辛子と挽肉の炒め物の夕食。自然と頬がゆるみ、いつもより食べ過ぎてしまう。


    明日取材でお会いする人の本を読んでいて、お米と交換するゆえに、お金もエネルギーが蓄積されたかたまり、と書かれていた箇所に目がとまる。苗に水と太陽と土の養分と微生物と労働力などさまざまなエネルギーが投入されて、稲穂が実ってできるお米もエネルギーのかたまりだから。


    それは田んぼで流す汗やもらす吐息、朝日を受けて黄金色に輝く稲穂の波を目の当たりにし、その上を渡っていく風を肌で感じているからこそ、「エネルギーのかたまり」という感覚が、とてもしっくりとくる。ただ止まっている米粒にエネルギーを見出す視力。それを手に入れられただけでも有意義な5年間だった。ともに作業した皆さんと、アルカディアの里の方々にも感謝したい。